本の畑

えっちらおっちら耕す、本やら何やらの畑。情報は芋蔓のように地下でつながっている。たぶん

食べる女 その2

都心へ向かう電車を待つホームで黙々とおにぎりを食べる女子を目撃した同じ日、
用を済ませて帰りの電車でまたもや食べる女を発見。
時間は夜の7時台。
前の電車が急行だったせいで、車内は普段より空いてました。

ドアの脇に立っている20代女子。
ワイン色の膝丈スカートに黒い薄手のカーディガンを羽織ってて、
インはオフホワイトのふりふり甘めのカットソー。
髪は肩より長く、シュシュで左肩の上に流すようにひとまとめ。
メイクは薄く、ぱっと見た感じは、おとなしい雰囲気でした。


二昔くらい前ならおじさま、おばさまたちに
「いいお嬢さんですね」と好感をもたれるかも。
強く主張するものが表立っていない若い女子を、
むかーしは「お嫁さん候補」として歓迎する風潮があったですよ。

個人的には、色とか素材とかの組み合わせに
「ほおお」というような工夫や独創性が感じられる、
おしゃれが楽しくてしょうがないんですという風情の若者が、
見ていておもしろいので好きでございます。
電車の中でもつい探しちゃってるかな(笑)。
なので普段だったら、彼女のようなタイプの方に注目することはあまりない気がする。

彼女に注意が向いたのは、手がゆっくり規則的に動き続けていたから。
左手は胸の前で静止、右手は胸の前から口元へ移動。
「え、どうして?」と思って見ていたら、
菓子パンを小さく小さくちぎって食べているんですわ。
動きが非常に緩慢なのは、ちぎる量が極端に少ないためとお見受けしました。



私、自慢じゃないけど大食いなので、
好きな食べ物を前にするとがっついていると思う。
小鳥のように食べる彼女を見て、
純粋に驚いた誰かさんです(笑)。
しかしね〜、電車の中ですよ。
飢えに苛まれているわけでもなかろうに、
なぜこんな場所で食物を摂取するのでしょう。

そこんとこが不思議だったのですが、
食べる女 その1」にいただいたコメントを読んで、
常識というかルールがぐらぐらしているらしいことに気づきましたわ。
乗り物の中しかり、電車のホームしかり。
外で立ったまま食べること、タブーじゃなくなってるのかも。


遠足のバスに準じるような、
非日常の場なら飲食はオッケーと思ってましたが、
いつの間にか基準が違ってきているようで。
古来より若い者はルールを逸脱するもの
と決まってたりしますんで、
目に余る迷惑行為でない限り、
「へ〜っ」と思いながら見物しているんですが、
衆目に晒されるような環境で良く食べられるなあ、とも思います。

人が見ている前で食べるのって、疲れませんかね。
何度か食べ物のレポートを書く取材をやったことがあるんですが、
店長さんやお店のスタッフの前で食べるのが苦痛で
食べ物ネタの仕事は受けないようになりました。
あと、仕事絡みで
「お食事でもしながら、ぜひ一度ゆっくりお話しを」
みたいな打診も基本的にお断りしています。
おいしいものは、くつろげる友達とのんきに食べたいもん。

食べる女たちは、電車の中での化粧と同種の現象なのかもしれんですね〜。
近いうちに、今も忘れられない傑作な化粧する(?)女をレポートしたいと思います。