本の畑

えっちらおっちら耕す、本やら何やらの畑。情報は芋蔓のように地下でつながっている。たぶん

気怠いお色気系*Pillow Talk


画像だけ下書きにアップしたつもりだったんですが、下書きじゃなく普通にアップしてた模様。意味不明の記事を作ってしまった。あはは。ぼりぼり。

暑気払い用CD、今日のは Sylvia の「Pillow Talk: Very Best of」。こちらもRAMPのCome Into Knowledge 同様、音が涼しいわけじゃなく、蚊取り線香を焚きながらベランダであほ〜っと聴きたくなる1枚。久しぶりにアマゾンのページを見てみたんですが、値段、高くないですか? プレミアが付くようになったのかなあ。私が買った時は1000円台だった気がする。いかん、いかん。とりあえず値段の話は置いときます。書きたいことは別なんで(笑)。

アルバム・タイトルにもなってる#1の「Pillow Talk」を初めて聴いたのって、いつだったかな。CDに封入されてるリーフレットによると、1973年に2週にわたって1位を記録したとあります。リアルタイムじゃ聴いていないので(当時はカーペンターズにのめり込んでた小学生なり)、ずいぶん後になってからラジオか、DJ君がどこかでかけたのを耳にした、ってところじゃないか。

何度目に聴いたのかは不明なものの、聴いたということだけは妙にはっきり覚えているのが、昔のFM東京(今はTFM)の番組。三菱電機ビルテクノサービスが提供していた「Floating into the night 」と女性の声でジングルが流れる番組があり(声はたぶん甲田益也子)、その中でかかったんす。

クラブDJもする選曲家が毎回ひとり登場し(音選協として知られていた、桑原茂一さんが設立した日本音楽選曲家協会のメンバーが順番に出演してたのかも)、CM以外はノンストップで曲が流れるクラブ系の番組。大好きだった「FM Transmission Barricade」(提供はJun Men)が終わってしまい、「聴くものがないなあ…」と思っていただけに、この番組を見つけたときは嬉しかった。

で、肝心の「Pillow Talk」を選んだのが、石井亮(あきら)さんだったか 、Tommy こと富久慧さんが代表を務めていた新宿・第三倉庫の店長だった、金杉はじめさんだったかはっきりしない。録音したカセットが今はないんです。私の記憶、まったくもって頼りにならず。くー。

ま、めげずにぼんやり覚えていることを書きますと、シャウトしない甘めの古いソウルが気怠くつながる中で、微妙にエロなため息がメロディーを彩るこの曲(タイトルからしてピロー・トークだし)が、選曲全体の雰囲気を左右する鍵として使われていた感じ。実際のお店というかクラブなら、こういう古くゆるい曲の流れは、お客さんがあらかた引いてしまった、閉店間際の早朝の時間帯に出現したりする気がする。

趣味のいいプロが、乗せようとか、踊らせようとかを狙わずに、リラックスしながら音楽をつないでくのって、なんか好きなんだなあ。そんな中にぼんやりいると、ほんとにほっとする。何に一番近いか考えてみたところ、鄙びた温泉とかじゃなくて、エアポケットのようにがらんと空いた時間帯の、街中に建つスーパー銭湯の屋外の大きな浴槽に浸かっている感じだったりするかも。まあ、現実には、朝近くまで遊んでいると、会社勤めが難しくなりますから、若くてもそうそうできなかったことは付け加えときましょう。





プロのリラックス感と書きましたが、大事なのはある種の雰囲気が維持されていること。それがないとただの手抜きですねえ。まあ、好みと重なる気持ちの良い音楽の流れには、なかなか出会えないもんです。「Floating into the night 」を今も覚えているのは。「Pillow Talk」を含めて、あの夜の曲の連なりが美しかったからだと思うんですよ。

それにしても、ネットがなかった当時の苦労って、ただならぬものがあった。お店(ハコ)の傾向とDJの得意分野を重ね合わせて考慮し(面倒すぎる)、「いいかもしれない」と出かけてた。外れた時なんか、心底がっかり(笑)。今は、twitterでたまにおしゃべりをするtomo__eさんに教えてもらった、日曜深夜(月曜早朝?)のレコ部等々、ゆるく浸れる感じの音楽は、USTで聴くことができるもん。いい時代になったもんだ。

さて、何度もリラックス感と唱えましたが、改めて「Pillow Talk」を聴いてみたところ、Sylvia さんのため息だと思っていた音は、大げさな息継ぎというか、息を吸う音みたいだわ。これだと緊張-弛緩という側面からいって、緊張系の音だわね。あれま。単純に親密で寛いだムードの曲、というわけではなかったということになりますか。う〜む。

*追記*
tomo__eさんがYouTubeを検索してくれたので、せっかくなのでぺたり。


呼吸と緊張ー弛緩の関係についてご興味がある方は、下記の本などいかがでしょう。呼吸の部分を少しだけ引用しましたが、<緊張ー弛緩>という繰り返される動きに着目し、身体だけでなく文化まで読み解いてみせた刺激的な内容の1冊です。

  • 呼吸との関連でいえばふつうの状態では、吸うときに体は緊張し、吐くときにゆるむが、興奮しやすい状況におかれているときや、意識的に集中しようとするとき(かっこ内省略)は、逆に息を吐くときにエネルギーがより集中する。

片山洋次郎『整体。共鳴から始まるーー気ウォッチング』(ちくま文庫)p70