本の畑

えっちらおっちら耕す、本やら何やらの畑。情報は芋蔓のように地下でつながっている。たぶん

理想的な花柄*モリオ


群ようこの『かもめ食堂』の記事を書いてた時、
DVDの画像を貼ろうと思ってアマゾンをうろついてたら
ふと目に留まったのが荻上直子モリオ』(光文社刊)。

オギガミさんって、映画の方の監督ですわよね。
おそらく皆さんはとうに知っていることだと思うんですが、
情報に疎い私は「彼女は小説も書くんですか。ええっ」と驚き、
すかさず購入。読んでみました。

昨年(10年)夏に発表された新作映画『トイレット 』の公開に併せ、
同時期(奥付は8月だから店頭に並んだのは7月下旬くらいかな)に出たようです。
アマゾンの情報を読んだ時点では、原作というわけではないけれど
映画に関連しているらしいという、非常にビミョーなことが分かったものの、
それが実際どういうことなのか、さっぱり想像つかず。
そんなこんなで両方読んだり、観たりするんだな。いいお客さんな私(笑)。


収録されているのは表題作「トイレット」約70ページと
「エウとシャチョウ」約90ページの2作。
内容は読んでのお楽しみ、ということで触れないことに。
どちらも面白かったですわ。おすすめ。当たりです。

荻上さんが、映画と小説のどちらを先に手がけたか不明ですが、
小説を映画にするとこれくらい変わる、みたいな単純なことじゃないだろうな、
という印象を受けましたよ。
ほら、良くあるではないですか、人気の小説が映画化されると、
こっぱずかしくなるようなアレンジが加えられることって。

すぐに思い浮かぶところでは『博士の愛した数式』だな。
私がっかりしました。深津絵里は好きだし、
期待してなかった浅丘ルリ子が役にはまってるうえ、凄みが出てて良かったのに、
映画としてあんなふうに仕上げられるのってねえ。
あれが世間のフツーの感覚なのか、と無理矢理納得しつつもがっかり。


『モリオ』と映画『トイレット』(こちらは後日あらためて)の関係は、
音楽に喩えれば昔なら変奏曲、
今ならリミックスとか演奏違いとかの感じじゃないですかね。
モチーフをどう展開させているか、というところに面白みがある気がする。

  • 白地に赤とグレーの大きめの花。花びらを描く濃い茶の線は中央から広がる。花と花をつなぐ薄茶色の茎を思わせる線には、それと同じ色の小ぶりの葉っぱが並んでいる。暖かい春の匂いがするような、理想的な花柄だった。僕は、やっと出会えた花柄に胸がいっぱいになった。p34

これを読んで「理想的な花柄」について思いを巡らせてから、
映画を見ると楽しかったりするです。私はそうだったよ。ぬふ。

*芋蔓本など*

  • J=P・トゥーサンの『浴室』は質感が似ている気がする。質感って何って突っ込みたくなったので、考えておく(笑)。

  • 表紙のイラストは映画『トイレット』の舞台である家のリビング(?)を元に描き起こしたとみた。