本の畑

えっちらおっちら耕す、本やら何やらの畑。情報は芋蔓のように地下でつながっている。たぶん

今さらですが群ようこ*かもめ食堂


編みものをする時、目の前のテレビに映画をなんとなく流しておいたりします。
たいていは音を消して。何度も見た好きなやつを、ぼ〜っと眺めるために流しておく。
最近は節電しなきゃいけないんで、あんまりやりませんが、
編み目から目を離して前を見ると、好きな映画が流れてるのって、
かなり好きなんですわ。

たぶん技術の習得(?)に一生懸命だったこどものころ、
高校野球を見ながらレースを編んでいたクセが残ってるんじゃないかと思います。
夏休みの自由制作のようなものとして、レースのテーブルセンターとか出してたの。
わはは。ヘンなこども。

野球がすごく好きなわけじゃない。
一種の時計といったらいいのかな、
バッターが球を打って、攻守が入れ替わりながら一定時間が過ぎると
ゲームが終わるっていう区切られた時間を、
あんまり入れ込まずに風景のように眺めるのが好みなんでしょう、たぶん。


こんな感じの編みものの友として、けっこう登場回数が多いのが
大好きな方も多いと思う「かもめ食堂 」。
美しい映像とアップダウンの少ないないだらだらとしたお話、
そしてちょこっとシュールな味付け。文句なしの仕上がりです。

音を消すからといって、
内容がどうでもいいわけじゃないことは
強調しておきたいな。
何度も見るほど好ましいから音が消せるのであって、
嫌いなものは「嫌い」という感情がオーバラップしてしまうので選ばない。
ストーリーへの共感がないと、流しておいても不快な気がするです。

で、今さらですが映画の原作である、群ようこかもめ食堂』(幻冬社)を読んでみた。
アマゾンで見たらハードカバーと文庫があることが分かり
(ベストセラーだから当たり前だね)、どちらにしようかと悩んだんですが、
映画にも出てくる牧野伊三夫のイラストがばっちり見えるだろうと踏んで
大型の方を選んでみました。

届いた本を持ってみて意外だったのは、いわゆるハードカバーではないこと。
ハードカバー(上製本)は厚紙が表紙の中に入ってるのでしっかりと固い。
これに対し文庫本などの「くるみ製本」は柔らかく、手に持って振るとしなりますわ。
かもめ食堂』は上製本とくるみ製本の中間のような作り。
なんていうんだろ、この作り。手持ちの本にも何冊かあるんだけど。

小説には映画では触れられていない、
3人の登場人物の背景などが描かれていて、「ほお〜」っていう感じ。
映画が好きな人は、ストーリーが立体的に膨らむのが実感できるので、
必読って気がする。
ただし、監督の荻上直子が映画でこうした要素をあっさり省いたのは卓見だし、
映画の魅力を解く鍵になっていると思うな。

ヘルシンキで食堂を開業するための資金は、あんなことやこんなことでゲットしたとは。
あはは。群ようこ、って、こんなすっとぼけたお話を書く作家だったんですかね。
人気があるのは知っていたものの、
編みものについてのエッセイ以外読んだことがなかったですよ。


  • いくら俊捷で武道の才能があるといわれたサチエでも、父には勝つ自信がない。秘密裏に着々と準備は進んでいたが、それに全く気づいていない父は、竹刀を手に素振りをしたり、近所を下駄で走ったりと、武道を貫いていた。p25

少し、群ようこ、読んでみようと思います。
おすすめがあったら教えて下さいましね。